プロンプトエンジニアリングとは?基本や目的、例、注意点などを徹底解説!
プロンプトエンジニアリングとは、生成AI(人工知能)に対して提示する質問や命令、つまり「プロンプト」と呼ばれるテキスト(自然言語)を効果的に設計する技術です。
適切に設計されたプロンプトによって、AIが学習した知識を最大限に引き出すことが可能になります。
本記事では、プロンプトエンジニアリングの基本や目的、例、注意点について分かりやすく解説します。
プロンプトエンジニアリングとは
プロンプトエンジニアリングとは、生成AIの機能を効果的に引き出すための技術です。
AIの能力を最大限に引き出すために重要なスキルと言えます。
プロンプトとは
プロンプトとは、生成AIに対して与える指示のことです。
テキスト(文章)の形で提供し、AIに何を生成してほしいかを伝えます。
具体的な指示を与えることが大切です。
プロンプトの作成例やコツについてはこちらの記事をあわせてご覧ください。
プロンプトエンジニアリングの目的
生成AIの出力品質はプロンプトに大きく依存します。
希望に沿った成果を出すためには、プロンプトが非常に重要です。
プロンプトエンジニアリングの主な目的は、AIの能力を最大限に引き出すためのプロンプトを設計することです。
プロンプトの4つの要素
Prompt Engineering Guideでは、プロンプトの要素として次の4つが挙げられています。
要素 | 概要 |
命令・指示 | 生成AIモデルから結果を引き出すことを目的とした特定のタスクや指示 |
背景・文脈 | AIの応答をより適切に導くための追加情報 |
入力 | AIに与える具体的なデータや情報 |
出力形式 | AIが出力する形式(フォーマット)の指定 |
プロンプト設計の基本
プロンプト設計の基本事項は次の5つです。
1.具体的で明確な指示
2.コンテキストの提供
3.フォーマットの指定
4.例を示す
5.段階的に進める
それぞれについて、掘り下げていきましょう。
1.具体的で明確な指示
希望に沿った回答を得るには、AIに対してどのようなタスクを実行してほしいのか、具体的に伝えることが重要です。
曖昧な指示では、期待通りの結果が得られないことがあります。
- 良い例: 「次の文章を日本語から英語に翻訳してください。『今日は暑いですね。』」
- 悪い例: 「何か英語を話してください。」(どんな文脈のどんな英語を出力すれば良いのか判断がつかない)
2.コンテキストの提供
AIが適切な回答を引き出すには、プロンプトに関連する背景情報や文脈を提供することが重要です。
コンテキストが明確であればあるほど、AIはより正確で関連性の高い回答を生成できます。
- 良い例: 「2023年におけるAI技術の主な進展を3つ挙げてください。特に医療分野における応用例に注目してください。」
- 悪い例: 「AI技術の進展について教えてください。」(具体的な文脈や焦点が不足している)
3.フォーマットの指定
AIが生成する応答の形式を指定することで、出力が期待通りの形式になるように誘導します。
フォーマットの指定は、情報整理という観点でも重要です。
- 良い例: 「以下の情報を表形式で提供してください。列は「名前」「年齢」「職業」としてください。」
- 悪い例: 「情報を提供してください。」(どのような形式で情報を提供すべきかが不明)
4.例を示す
具体的な例を提供することで、期待通りの出力形式やスタイルを生成しやすくなります。
- 良い例: 「次のように応答してください。例:『AI技術の進展として、1. ディープラーニングの応用拡大、2. 自然言語処理の高度化、3. 医療分野でのAI活用』」
- 悪い例: 「応答を示してください。」(具体的な例がないため、期待される応答が不明確)
5.段階的に進める
複雑なタスクを実行する際には、段階的に指示を与えることで、AIが一つ一つのステップを確実に実行できるようにします。
複雑なタスクを効率的に進める際に有効です。
- 良い例:
①研究テーマを選定してください。
②そのテーマの背景情報を教えてください。
③研究テーマの主要な点を3つあげてください。
④各要素について、詳細な説明をしてください。
⑤最後にレポートにまとめてください。
- 悪い例: 「データを解析して結果を教えてください。」(複数のステップが含まれており、具体的な手順が不足している)
プロンプトテクニック
プロンプトテクニックとは、生成AIや自然言語処理(NLP)モデルに対して効果的なプロンプトを作成するための手法やコツです。
テクニックを使用することで、AIの応答の質を向上させ、より具体的で有用な出力を得ることが可能になります。
代表的なプロンプトテクニックを4つ紹介します。
Zero-Shotプロンプティング
Zero-Shotプロンプティングとは、あらかじめ情報を与えることなく、直接AIに質問するプロンプトです。
例文を提示せず、簡単にプロンプトを生成できます。
AIの一般的な知識や推論能力に依存した使用方法です。
【例】
「気候変動の原因を教えてください」
「ディープラーニングと機械学習の違いを教えてください。」
細かいプロンプトを考えず、簡単に質問できる点がメリットです。一方、複雑な質問に対しては適切な回答が得られないことが多く見られます。
その場合は別のテクニックを使用してみましょう。
Few-Shotプロンプティング
Few-Shotプロンプティングとは、いくつかの具体例を提示した後で、タスクを指示する手法です。
少数の例を提供することで、希望に沿った回答を得やすくなります。
【例】
タスク: 以下の文章の感情を「ポジティブ」、「ネガティブ」、「中立」のいずれかで分類してください。 例1: 文章: 今日は天気が良くて、公園でピクニックを楽しみました。 感情: ポジティブ 例2: 文章: 電車が遅延して、大切な会議に遅刻してしまいました。 感情: ネガティブ 例3: 文章: 今朝、いつも通りコーヒーを飲んで出勤しました。 感情: 中立 では、次の文章の感情を分類してください:文章: 長年の夢だった海外旅行に行けることになり、とてもワクワクしています。 |
事例を与えることでAIの出力精度が向上します。
ただし、例が少ないと希望した回答が得られないケースがあります。一方、例を増やすとプロンプトが長くなり手間がかかる点は、デメリットといえるでしょう。
Self-referential Prompting
Self-referential Promptingとは、AIに自身の役割や能力を与える手法です。AIは自身の役割や能力を認識したうえで回答を出力するようになります。
例:「あなたは中学生の教師です」
「あなたは〇〇の専門家です」
一定に役割を課すことで、文脈に適した回答を得やすくなります。なお、成果を上げるためには、プロンプトは明確で具体的であることが必要です。
Iterative Refinement Prompting
Iterative Refinement Promptingとは、AIの出力に対して何度もフィードバックを繰り返し、改善していく手法です。
例
ユーザー「〇〇とはどういうものですか?」
AI「〇〇は××です(基本概念の説明)」
ユーザー「具体的な事例をあげて教えてください」
AI「(回答)」
ユーザー「では、それを使用した場合のメリットと注意点を教えてください」
AI「メリットは~~。注意点は~~。」
このように、何度もフィードバックを繰り返すことで、より詳細な情報を引き出していく手法です。繰り返しのプロセスに手間と時間がかかりますが、確実性の高い手法と言えるでしょう。
プロンプトパターン(Prompting Patterns)
特定のタスクや目的に最適化した、さまざまなプロンプトパターンがあります。ここでは、代表的なものを4つ紹介します。
プロンプトパターン | 概要 | 例 |
Scaffolding Pattern | AIが複雑なタスクを理解しやすくするために、タスクを段階的に分割する。明確な構造を提供し、AIを望ましい情報に導く。 | 「まず、データを読み込んでください。次に、データを分析してください。最後に、結果を報告してください。」 |
Redirection Pattern | AIが不適切な方向に進んだ場合に、再度正しい方向に誘導する。プロンプトに言い換えや制約を追加する。 | 「あなたの答えは興味深いですが、もう少し具体的な事例を挙げてください。」 |
Multi-Step Pattern | 複雑なタスクを複数のステップに分けて指示する。各ステップごとに明確な指示を与え、動的で対話的なやり取りを促進する。 | 「1. データを収集する 2. データをクレンジングする 3. データを分析する 4. 結果を報告する」 |
Constraint Pattern | AIの応答に特定の制約を設ける。プロンプトに明示的な境界を設定し、出力の制御やバイアスの軽減を図る。 | 「100文字以内で回答してください。」 「次のフォーマットで回答してください:問題、原因、解決策」 |
いくつものパターンを知っておくことで、特定のタスクや目的に適したプロンプト設計に役立ちます。
参照:LLM Prompt Engineering Patterns
プロンプト戦略(Prompting Strategies)
AIの応答を最適化するための全体的なアプローチや手法です。
先ほど紹介したパターンの選択やプロンプト設計を含む包括的な計画を指して、「プロンプト戦略」と呼ばれています。
ここでは主なものを5つ紹介します。
分割統治戦略(Divide and Conquer Strategy)
大きなタスクを複数の小さなタスクに分割してAIに指示する戦略で、複雑な問題を段階的に解決するために有効です。
処理しやすい部分に分割することで、精度の向上や一貫性の維持が期待できます。
例: 「まず、データを収集してください。その後、そのデータを分析し、最後に結果を報告してください。」
文脈提供戦略(Context Providing Strategy)
タスクに関連する背景情報や例を提供することで、AIが適切な応答を生成するための文脈を理解しやすくする戦略です。
背景情報を提供することで、AIの理解が深まり、より関連性の高い応答が得られます。
例: 「あなたはマーケティング担当者です。次のキャンペーン案を評価してください。」
制約設定戦略(Constraint Setting Strategy)
出力形式や文字数などの制約を設けることで、AIの出力をコントロールする戦略です。
制限を設けることで、AIの応答が特定の基準に沿ったものとなり、バイアスの軽減や一貫性の向上が図れます。
例: 「200文字以内で次のテキストを要約してください。」
マルチモーダル戦略(Multimodal Strategy)
1つの情報源だけでなく、複数の情報源を組み合わせる戦略です。例えば、テキストだけでなく画像や音声などの他のモードを組み合わせてAIに入力することもあります。
複数の情報源を組み合わせることで、より豊かなインタラクションと多面的な理解が得られます。
例:「添付の画像と以下のテキストを参照してください:
[テキスト内容をここに記載]
1. 画像とテキストの関連性を説明してください。
2. 画像がテキストの内容をどのように補完または強調しているか分析してください。
3. この組み合わせが最も効果的に使用できそうな状況や媒体を3つ提案してください。」
反復改善戦略(Iterative Refinement Strategy)
AIの初期出力を評価し、フィードバックを基にプロンプトを改善して再度AIに指示する戦略です。
継続的にプロンプトを調整することで、より正確で洗練された応答を引き出せます。
例: 「前回の回答を基に、さらに詳細な説明を追加してください。」
プロンプトを設計する際の5つの注意点
ここでは、プロンプトエンジニアリングを行う際に、注意すべき点を5つ紹介します。
シンプルな指示から始める
プロンプト設計の際には、最初にシンプルで明確な指示を与えることが重要です。
複雑な指示を最初から与えると、AIが混乱し、期待通りの回答が得られないことがあります。
シンプルな指示から始め、徐々に詳細を追加していくことで、AIが段階的に理解を深めるため適切な回答を得られる可能性が高まります。
何度も繰り返して精度を高める
プロンプトは一度設定して終わりではなく、何度も繰り返して改善していくことが大切です。
初回の応答を評価し、フィードバックを基にプロンプトを調整することで、AIの応答の精度を高めることができます。
また、AIの技術は日々進化しています。
「前回利用したプロンプトが最適とは限らない」と考え、毎回工夫を重ねることが大切です。
ファクトチェックを行う
AIの応答には誤った情報が含まれることがあります。
そのため、AIの出力結果に対し、ファクトチェックを行うことが重要です。
正確な情報を提供するためには、信頼できる情報源を確認し、AIの応答を検証することが必要です。
一貫性を保つ
プロンプトの設計において、一貫性を保つことが重要です。
同じトピックやテーマに対しては、同じ形式や構造のプロンプトを使用することで、AIの応答が一貫したものになります。
一貫性のないプロンプトは、AIの混乱を招き、不適切な回答を引き起こす原因となります。
ユーザー視点を考慮する
プロンプトを設計する際には、最終的なユーザーの視点を考慮することが重要です。
ユーザーが何を求めているか、どのような情報が有用かを理解し、そのニーズに応えるプロンプトを作成することで、より有益な回答が得られます。
まとめ
プロンプトエンジニアリングは、プロンプトを設計する技術です。
プロンプトエンジニアリングを最適化させることで、AIの能力を最大限引き出すことが可能になります。
本記事を参考に、プロンプトエンジニアリングに取り組んでみましょう。
「画像生成 AIをビジネスで活用したいがどうすればよいかわからない」とお悩みの方は、こちらの記事を併せてご覧ください。